「高度プロフェッショナル制度」は、専門性の高い一部の職種に対して残業代をなくして、その代わり成果に応じて一定の賃金を支払う制度です。対象は年収1,075万円以上ですから、ほとんどの人は自分とは関係ないと思っているかもしれません。けれど、この制度は別名「残業代ゼロ制度」とも呼ばれていて、今まで違う名前で国会に法案が提出されてきましたが、都度否決されてきたのです。どうしてかというと、現状では、高度な技術を持った人だけを成果主義で働かせるということになっているので、このハードルが徐々に下がっていくのではないかと危惧されているからです。例えば、今から32年前、「派遣法」が導入されました。導入当初は、通訳など一日何万円も稼ぐ高度な技術を持つ13業種が対象だったのですが、その後、16業種、26業種と業種が拡大し、今ではご存じのように「誰でも派遣」となってしまいました。「派遣社員」は、すぐにクビにできる低賃金労働者の代名詞となったのです。「派遣法」と同じように、「高度プロフェッショナル制度」も、導入されたらなし崩し的に対象範囲を広げていくのではないかとの危惧から法案成立がみ送られてきたのです。