家電の操作もネットでの注文も、すべて声に出すだけです。コンピューターを“操作する”という認識は過去のものとなります。そんな未来が、実際の製品として手に届くまで、あと一歩というところまで近づいているのです。「Amazon echo」や「Google Home」などといった、音声認識機能をもったスピーカー型のデバイスが注目されています。これらは、自宅の居間などに置いてWi-Fiと接続することで、音声で操作して、商品の注文や調べ物ができます。昨年販売されたAmazon echoはすでに1000万台以上が販売されるヒット商品になっていて、この分野では他社を大きく引き離しているのです。その状況で、アップルからもiPhoneなどに搭載されている音声認識システム「Siri」を応用したスマートスピーカーが発表されるとの情報が流れ、6月初旬に開催された開発者向けの会議「WWDC 2017」には注目が集まりました。その期待の新製品、アップルのHomePodの発表は前評判からみると多少「斜め上」からのものとなったのです。Siriによる音声認識機能やホームオートメーションよりも、あくまでスピーカーとしての機能が前面に押し出される説明となったのです。Wi-Fiに接続し、自動的に部屋の空間を認識して音響の指向性を調整してくれる機能に多くの人が感嘆の声を上げたのですが、どこかで本当に重要な説明を避けているような歯切れの悪さが基調講演にはあったのです。しかし、発表された内容を注意深く見ると、アップルがこのスピーカーの中に、将来へのさまざまな布石を仕込んでいるのが見えてきます。例えば、HomePodは音楽が鳴っている最中でも、周囲に取り付けられた6基のマイクによって音声によるコマンドを判別することができます。これは、大勢の人が会話している場で、HomePodに音声コマンドを認識してもらうために全員が一度口を閉じなくてはいけないような居心地の悪さを避けることにも応用できる技術なのです。
アップルの音声認識スピーカー